「AIGはヘッジファンドだった」。バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、3月3日に米国上院予算委員会で怒りを込めて吐き捨てた。同社は、2008年第4四半期に616億ドルの最終赤字を計上。

 政府当局は、これまでの400億ドルの公的資金注入、ニューヨーク連銀からの600億ドルの特別融資枠に加え、300億ドルの追加優先株発行枠設定などの支援策を再び打ち出さざるをえなくなった。巨額損失はなぜ発生したのか。

 同社は金融機関に証券を貸し付け、その担保に受け取った現金を本来、国債のような安全・確実な資産で運用すべきところを、RMBS(住宅ローン担保証券)で運用していた。

  そのため、RMBSの値下がりで多額の損失を計上してきた。加えて、スーパーシニアCDO(債務担保証券)を保証するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を大量に売っていた。

 CDOの値下がりで巨額損失を計上したことから見ても、適切なリスク管理が行なわれていたとは言いがたい。ヘッジファンドとレッテルを貼られるのも無理はない。

 救済の一環として08年12月、ニューヨーク連銀との共同出資会社に対しRMBSとCDOの売却が進められてきたが、その間にも両資産の下落は続き、第4四半期に75億ドルの評価損が生じた。

 さらには、CMBS(商業不動産担保ローン債券)などの損失186億ドル、損失計上が続いたことによる繰延税金資産の取り崩し210億ドルなどが加わり、600億ドルを超える赤字計上に至った。まさに損失のデパートだ。

 「業績不振が続く大手銀行でも繰延税金資産取り崩しは、今後、予想される」(藤岡宏明・大和証券SMBC金融市場調査部次長)。その意味でAIGは“金融危機の先駆け”ともいえる。

 CMBSなどからの損失の発生は今後も続く。AIGは、公的資金を吸収し続けるブラックホールと化す。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  竹田孝洋)