ヒートアイランド対策に加えて、夏の節電が大きな課題となっている現在、オフィスビルや工場、商業施設の屋上や壁面の緑化や環境緑化に注目が集まっている。「緑のちから」による遮熱、断熱効果、保水、防音効果だけでなく、緑化は景観の維持向上やコミュニティづくり、安らぎの提供、ストレスの解消にも役立つ。環境緑化、緑化ビジネスの現状と展望、また、緑の効用、メリットについてまとめた。

 

 四季の庭をテーマに、例年、稲も植えられている六本木ヒルズの屋上庭園、福岡市中央区のアクロス福岡に設けられた階段状の屋上庭園……。

 緑化を売りにする大型商業施設・オフィスビルが増えている。さらに今年から、建築家の安藤忠雄氏の発案で、大阪駅前のシンボル、大阪マルビルの壁面全体を緑化するプロジェクトがスタートする。同プロジェクトで直径30メートル、高さ120メートルの大木を10年かけて造るという。

温暖化と省エネ対策で
進む屋上・壁面緑化

 東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫の6都府県を中心に、ビルや工場、商業施設などの屋上および壁面を緑化する動きが進んでいる。

 全国の緑化面積のうち上位6都府県が占める割合は、屋上で約75%、壁面で約84%(国土交通省調べ)。その理由は、地方自治体の条例と助成制度にある。

 たとえば、東京都の条例では、2001年4月以降、1000平方メートルを超える敷地での建築物に対して、新築、改築、増築の別を問わず、建物の緑化が義務付けられ、緑化計画書を事前に届け出なければならなくなった。緑化は「地上部および建築物上」に施すのだが、地上部を有効活用する場合、必然的に屋上や壁面が緑化の候補場所となる。

 大阪、兵庫、埼玉でも、同様の条例が施行されている。いずれも都市部のヒートアイランド現象が問題となっているエリアで、緑化は温暖化や省エネ対策を意識した対応とも言える。

 条例で緑化を義務付ける一方で、これらの自治体では屋上等の緑化に助成金を拠出している。08年ごろからは、緑化による冷却効果だけでなく、洪水対策も視野に入れた保水性能も緻密に計算し、助成に際しての「緑化の質」をより厳しく判定する動きも強まっている。