30代~40代のビジネスマンが夢中になるというモバイルゲーム「ケータイ国盗り合戦」。運営するマピオンは、位置情報にゲームというエンタメ要素をプラスすることで、ネットからリアルへという動線を描くことに成功した。これは、新たなビジネス戦略として注目される「O2O(Online to Offline)」の、一つの成功事例といえる。

 地図サイト「マピオン」が誕生したのは、インターネットにダイヤル回線でアクセスしていた1997年のこと。以来、国内地図サイトの代表的ブランドとして、さまざまな企業や自治体に店舗、拠点の地図検索サービスを提供してきた。

 地図サイトのメーン機能は検索だが、このところのトレンドは、培ってきた地図データを活用した“位置情報ビジネス”の創出である。個人の行動に近接したマーケティングやピンポイントの顧客発掘など、位置情報は幅広く利用されている。

 電子地図関連の事業者は、必要とする企業へソリューションを提供する「BtoB」の形態が一般的だが、マピオンが目指す方向は違った。その特徴は「位置情報×エンターテインメント」にあると、同社O2O事業部の五味菜歩氏は言う。

「地図サイトならではの豊富なデータ、精度、レスポンスの速さ。こうしたマピオンの強みを生かして、新しいビジネスを創出することが当初のミッションでした。目的の場所、ルートを検索して終わりではなく、目的地そのものを提案し、楽しんでもらうような仕かけとしてエンターテインメント要素に注目しました」

ビジネスマンが夢中の
「ケータイ国盗り合戦」

 利用者の行動を促すためのエンタメ的要素を強化し、2008年に「ケータイ国盗り合戦」が正式公開される。これは一種のスタンプラリーだが、全国を600の国に分け、各エリア内で端末の「国盗り」ボタンを押すとその国を制覇。全国統一を目指す、というものだ(図)。これが予想以上の反響を呼び、旅行ニーズを生み出すことに成功した。「BtoB」ではなく「BtoC」から発想し、新たな利用価値を提案するのがマピオンの狙いだ。

「自分の足を使って動き回らなければ、制覇した国のコレクションを増やすことはできません。普通、ゲームのユーザーは若い世代が中心ですが、このゲームは仕事で外出、出張するビジネスマンがメーンです。仕事のついでから始まり、“統一”のためにドライブ、旅行に出かける機会が多くなった。そんな声をよく聞きますね」(五味氏)

 利用者数は100万人を超え、600の国を統一した人は400人を超えている。利用者同士のコミュニケーションも活発で、彼らは互いを「国友(くにとも)」と呼び、オフ会も積極的に開催されているという。