「また日生がやったか」――。保険業界には、驚嘆ともため息ともつかぬ声が広がった。 

 4月から標準利率の改定によって多くの保険商品の保険料が引き上げられる中、1月早々に主力商品の保険料の据え置きを発表し、業界を驚かせた日本生命保険。それに続いて3月1日には、事実上の“値下げ“となる新たな学資保険を4月2日から発売すると発表したからだ。

 各社が驚いたのは、値下げだけではない。日生の学資保険は満期時に受け取る給付金が、払い込んだ保険料総額を大きく上回る114%(戻り率)にも上ることだ。

 実は、戻り率が100%を越える学資保険はそう多くはない。表にあるのが100%を越える代表的な学資保険で、これ以外の大半が元本割れとなる。

 ちなみに、学資保険といえば想起されがちなのは簡保(現かんぽ生命保険)の学資保険だが、その戻り率は99.9%しかなく、元本割れしてしまうのが現状だ。

 というのも、保険会社にとって受け取った保険料をほぼそのまま支払う学資保険は、まったく儲けが出ない。長らく低金利が続いているため運用益が稼げないからで、「本音を言えば、学資保険は売りたくない商品」(大手生保)なのである。

 状況は日生といえども同じ。にもかかわらず、日生が高い戻り率の学資保険を発売するのはなぜか。複数の大手生保幹部は、「鳴り物入りで発売した主力商品の売れ行きが鈍いからだろう」と見る。

 学資保険は死亡保障と異なり、将来、必ず必要になる学費に備える保険のため、とても売りやすい。そのため業界では「ドアノック商品」と言われており、学資保険をきっかけにして本当に売りたい商品を売り込むための“撒き餌”とされている。つまり日生は、高い戻り率の学資保険を餌にして、売れ行きの鈍い主力商品のテコ入れを図るのではないか、と目されているのだ。