黒田日銀に集まる三つの関心<br />真価問われる政府への姿勢19日の退任会見で白川氏は「生まれ変わっても総裁をやりたいか」との質問に対し、「そんなふうには思っていません」と回答した
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 黒田東彦・前アジア開発銀行総裁が3月20日、日本銀行の第31代総裁に就任した。その約1週間前の12日、市場では日銀新体制による臨時の金融政策決定会合の観測が駆け巡った。10年前、福井俊彦氏が日銀総裁に就任した際のサプライズ会合に倣うのではないかとの見方が浮上したからだ。

 黒田氏がいつ“大胆な”緩和策を打ち出してくるのか。第一の関心はそこにある。

 本稿執筆の3月20日時点では日銀の事務方は臨時会合開催には否定的だが、総裁(議長)である黒田氏が踏み切れば法律上は可能となる。

 もっとも今、市場のメインシナリオは、4月26日の2回目の会合に移っている。この日は展望レポートで物価見通しを示し、直後には経済財政諮問会議での報告も予定されている。日銀自身、こうした市場予想を認識している。

 第二の関心は緩和策の中身だ。緩やかなインフレを目標としつつも、国債価格の安定を維持するという極めて難しい状況が続くだけに、黒田氏が打ち出す策には限界がある。選択肢としては、国債購入の増額と対象国債の年限長期化(現在は3年以下)、リスク資産購入の増額などが考えられる。

 このうちリスク資産の購入は、日銀のバランスシートが大きく毀損すれば財政出動が必要になってくる。財務省にしてみれば、「簡単には認められない」(財務省関係者)話だろう。

 ただでさえ日銀は2012年度上半期決算で、外国為替関係損失が主因で2329億円の最終赤字に陥っている。通期では何とか最終黒字を確保する見込みだが、リスク資産の購入を増やせば不透明感は増す。そもそもリスク資産の市場規模は国債に比べて小さく、購入金額は自ずと限られてくる。