3月某日、スイスの高級腕時計ブランド タグ・ホイヤーとダイヤモンド社が、若手ビジネスパーソンを応援するプロジェクト「タグ・ホイヤー イブニング・ビジネスサロン」を開催した。「楽しく働く事が、社会人としての成長の近道だ」をテーマに、ダイヤモンド・オンライン編集長の原英次郎とダイヤモンド社人材開発部編集部副部長の間杉俊彦が対談。今回はエスパスタグ・ホイヤー銀座での対談の模様をお届けする。

社員の意識改革と部門別採算制度が組み合わさって
JALの再建が進んだ

間杉 原さんが間もなく本を出されるということで、日本航空の再建の物語なんですね。

ダイヤモンド・オンライン編集長の原英次郎氏(左)と、ダイヤモンド社人材開発部編集部副部長の間杉俊彦氏

 ええ、社員の方が真剣で、この変化はホンモノかなと。みなさんはJALというと、5200億円にものぼる借金を免除してもらい、企業再生支援機構から3500億円の出資を受け、再生できて当たり前と思われるかもしれませんが、55歳から上の層はほとんど辞めさせられているんですね。さらに、35歳以上の人は、給料や待遇が下がるけれど残るかどうかという決断を迫られた。

間杉 年齢層が大きく入れ替わったのですね。日本航空の悪しき体質を引きずる年代がいなくなった。それとなんといっても、京セラ創業者である稲盛和夫さんが、政府に乞われて社長に就任したことは大きいですよね。

原 結論からいえば、稲盛さんの経営哲学、フィロソフィーが浸透したという点が再生の大きな原動力だと思います。もう一方で、部門別採算制度を採り入れています。社員の意識改革と部門別採算制度、その2つが組み合わさって再建が進んでいく。どちらが欠けてもダメだっただろうと思うんです。

間杉 稲盛さんは、「この会社は従業員のために存在する会社である」ということを明示したんですね。これには、「倒産した会社なのに」と批判もあったようですが……。本の中で印象的だった稲盛さんの言葉が「近代の経営理論からいうと株主価値を高めるのが経営の目的であると言われていますが、そうではありません」と。稲盛さんは「従業員が本当に幸せになってくれること以外に目的はないんだ」、というふうに言い切っているんですよね。

原 常識的に考えて「価値を生み出しているのは誰か」と考えると、それはやはり働いている人たちなんですよ。その人たちを最優先に持ってくる。アメリカに負けたから、アメリカ流の考え方の方がいいんだというのではなく、稲盛さんが「経営」というものを突き詰めて考えた結果の結論なんだと思います。

間杉 今日のテーマは「楽しく働くことが成長につながる」。これは私が人材育成の仕事に関わって本当にそう感じているんですけど、実際そうなっていないんじゃないか。「ゆとり世代は働かない」なんて言われますが、でも社員が生き生きと楽しく働ける風土やしくみづくり、そういうことに経営者が意を配っているのか。「楽しく」というのは年配の経営幹部層には受けが良くないんですが、何も「面白おかしく」ということじゃない。「厳しい試練や、挑戦も楽しもう」という意味です。つらいことをつらいと思うだけじゃな、人は成長しませんよ。たぶん制度じゃなくて風土が大事なんだと思うんですが、それはすごく難しい。この本はまさに会社の「風土を変えた」という話がメインモチーフになっています。興味のある方はぜひご一読ください。