18カ月以内に80億円の増収、180億円の増益──。サーベラスが提案したとされる経営改善策には、安易な増収策や影響を顧みないリストラ策が満載だ。バラ色の数字に潜む矛盾と欺瞞を斬る。(「週刊ダイヤモンド」 西武再上場問題取材班)

「これでは、埼玉では生きていけなくなる……」

 昨年10月、サーベラスから送付された経営改善の促進・拡充策を目にした西武ホールディングス幹部らは頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

 それもそのはずだ。西武秩父線など5路線が不要路線として挙げられたほか、「埼玉県の象徴」であり、2012年3月期から最終黒字化している埼玉西武ライオンズも売却の選択肢に含まれるなど苛烈な中身だったからだ。

 それだけではない。改善策は、主要子会社のプリンスホテル、西武鉄道でそれぞれ「増収策」「コスト削減策」「戦略的施策」に分けて列記され、計47項目にも上っていた。先の路線や球団の廃止・売却は戦略的施策に組み入れられていたのである。

 増収策、コスト削減策には、2013年3月期から16年3月期までの各期の売上高、EBITDA(償却前営業利益)の増加額、投資額も弾き出されていた。実は、この各項目をつぶさに検証することでサーベラスが言うところの「経営改善」の本音がおのずと浮かび上がってくる。

安易な増収策が羅列
安全面軽視の人員削減

 まず、目に付くのは安易な増収策だ。ホテル事業ではレストランや客室のサービス料を従来の10%から2倍の20%に引き上げて手っ取り早く売上高を増やそうというもの。外資系、日系を問わず国内のホテル、レストランではあまり類を見ない水準だ。平均客室単価の5%改善も目指している。これらは投資もなしで、そのままそっくり利益になると踏んでいるだけに、実現できれば効果は絶大だ。

 だが、競争激化のこのご時世に値上げを実施すれば客足が減る可能性はかなり強い。ホテル業界からは「大がかりな改修でもして質が上がったと実感してもらえなければ値上げなどできっこない」(関係者)という冷ややかな声が上がる。つまり、当然織り込むべき需給が考慮されている節はない。

 ただ、切り札と言えそうなのがマリオットやヒルトン、ハイアットなど有名外資系チェーンとの共同ブランド化。つまり体のいい“名義借り”だ。