強烈なサプライズとなった
「量的・質的金融緩和」(QQE)

 4月4日、日銀は市場に強烈なサプライズを与える追加緩和に打って出た。名づけて「量的・質的金融緩和」(Quantitative and Qualitative Monetary Easing、以下QQE)。金融政策の操作目標をこれまでの無担保コールレート(オーバーナイト物)という金利から、マネタリーベース(=日銀当座預金+銀行券発行高+貨幣流通高)という量的指標に移し、その残高を2012年末の138兆円から2013年末200兆円、2014年末270兆円という具合に急増させる(量的緩和)。

 さらに、買入対象国債の年限を40年債を含む全ゾーンに広げ、かつETFなどのリスク資産も買い増すこととした(質的緩和)。その結果、2014年末に向けて日銀のマネタリーベースは他国を圧倒する規模とスピードで増える見込みだ(図表1参照)。市場の事前予想を上回る緩和であり、足下にかけて円安・株高が急進している。

アベノミクスの焦点は「第2幕」へ<br />~労働市場の流動化が焦点に~<br />――森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト

円安の特徴①:期待主導

 為替に影響する要因として、通貨の需給を考えてみよう。日本円の供給の増加は円安要因、減少は円高要因というのは専門的な知識がなくともイメージしやすいであろう。

 国際経済学においても「マネタリー・アプローチ」という考え方があるが、これは端的に言えば「為替レートは各種通貨建て資産の需給を均衡させるように決まる」という考え方だ。

 実体経済で需要される通貨の集計量として現金・預貯金などマネーストック(かつてマネーサプライと呼ばれた)が考えられるが、より中央銀行の立場に近い集計量として上述したマネタリーベースが挙げられる。