3月14日、僕は参議院会館の1階講堂にいた。民主党の有田芳生参院議員が呼びかけた「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」に参加するためだ。この日に配布されたチラシには、集会の趣旨が以下のように記述されている。

「在特会」(在日特権を許さない市民の会)などによる異常デモが、東京・新大久保(2月9日)、大阪・鶴橋(2月24日)で行われました。そこでは「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」「よい韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「ハヤククビツレ チョウセンジン」(新大久保)「鶴橋大虐殺」(鶴橋)などが主張され、「殺せ 殺せ 朝鮮人」といったシュプレヒコールが繰り返されました。3月31日には「新大久保排害カーニバル」なるデモが再び行われる予定です。韓国や北朝鮮との間でいくら国際問題があろうとも、在日韓国・朝鮮人に対して殺人教唆する行為は、公共の平穏を乱し、人間の尊厳を傷つけるもので、決して許されるものではありません。ここに国会議員有志が抗議集会を行い、排外主義、レイシズム(人種差別)の広まりを押しとどめる意志を表明いたします。

 在日外国人が日本で不当な特権を得ていると主張して、その撤廃を目標に掲げた在特会が発足したのは2007年。この5年間で急激に勢力を増大させ、日本各地で街宣・デモ・集会などを開催している。当初はネットの掲示板などを自分たちのフィールドにしていたので、ネトウヨ(ネット右翼)などと呼ばれていた。

 この日の集会は有田の挨拶と宣言で始まり、次に20分ほどの映像が上映された。2009年に在特会が京都朝鮮第一初級学校の校門前で行ったデモンストレーションの映像だ。第一初級学校とは要するに小学校だ。幼稚園も併設されている。

 その校門前に日の丸の旗などを掲げながら現れた在特会のメンバーは、「日本人を拉致した朝鮮総連傘下の朝鮮学校、こんなもんは学校でない」「スパイの子どもやないか」「北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮学校を日本から叩き出せ」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」「なめとったらあかんぞ」などと拡声器を使って怒鳴り続けた。もちろん校舎の中には子どもたちがいる。じっと息を殺して聞いていたはずだ。