損害保険料率算出機構は先日3月26日、地震保険料率の変更に関する届出を金融庁長官に行った。全国平均で地震保険料率は15.5%のアップに。2014年7月以降を保険始期とする契約から、地震保険料が改定される見込みだ。

そもそも「地震保険」とは何か

2014年7月から地震保険料が改定に<br />保険料アップでも「地震保険が高くない」理由しみず・かおり
ファイナンシャルプランナー。1968年東京生まれ。ファイナンシャルプランナー。学生時分より生損保代理店業務に携わるかたわら、FP業務を開始。2001年、代理店での10年間の経験を生かし独立、のち(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。相談業務、執筆・講演なども幅広く展開、TV出演も多数。著書に『見直し以前の「いる保険」「いらない保険」の常識』(講談社)、『こんな時、あなたの保険はおりるのか?』(ダイヤモンド社)、『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)ほか多数。

 地震保険は、地震・噴火またはこれによる津波により、住宅や家財が受けた損害をカバーする保険である。

 そもそも地震はいつ・どこで・どの規模で発生するかが予測するのが困難な災害である。よって事故の発生確率から保険料をはじき出す保険とは、そもそもなじまない災害といわれる。そのため、かつては地震に対する補償制度は存在していなかった。

 だが1964年の新潟地震を契機に、地震国であるわが国で国民的な補償制度の必要性を求める議論が巻き起こった。当時の大蔵大臣は田中角栄氏。氏の強力な後押しもあり、法律に基づき損害保険会社だけでなく国も保険金の支払いを保証する、官民一体の制度として地震保険制度は誕生した。

 法律に基づく地震保険は、取扱保険会社が異なっても、補償内容・保険料ともに一律だ。損保会社が破たんしても、地震保険契約により支払われる保険金が影響を受けることもない。しかしながら、想定外に巨額の保険金支払いが生じても保険金は確実に支払われるべきであり、そのため個々の契約には種々の制限が設けられている。

 地震保険の対象は居住用建物・生活用家財に限られる。事業用の建物や什器備品、現金や有価証券等、あるいは貴金属や宝石、骨とう品などのぜいたく品は保険金支払いの対象外である。

 設定できる地震保険金額についても、火災保険金額の30%~50%の範囲内かつ建物は5000万円、家財は1000万円までが上限となる。つまり建物の再調達価額で設定する火災保険金額の半分までが地震保険金額の上限となるため、そもそも地震保険金だけで建物を再建、家財を再取得できる仕組みではない。

 それでも、被災により住まいや生活用家財が被るダメージは、私たちにとって途方もなく大きい。にもかかわらず、わが国では失った住まいに対する支援は限られ、唯一の制度といえる被災者生活再建支援法による支援金は、最大でも300万円である。