大手の中で一人、定価を高めに設定してきた牛丼の老舗「吉野家」が、遂に値下げに踏み切った。

吉野家が定価をついに値下げも<br />注目は価格でなく“あの時の味” 4月18日午前、新価格「並盛280円」が掲載されたメニューに変えられた
Photo by Ryosuke Shimizu

 牛丼市場は吉野家に加えて、ゼンショーの運営する「すき家」、「松屋」の三強がほとんどを握っている。吉野家の牛丼並盛りは他社よりも100円高かったが、4月18日から、280円に値下げし、三社の価格が揃った。

 先行して、4月前半には、すき家と松屋が期間限定の値下げセールを実施していた。そのため、一連の動きをテレビや全国紙は「アベノミクスに逆行」「デフレ脱却を目指すアベノミクスをよそ目に」などと報道し、牛丼大手の価格戦略に注目が集まった。

 しかし、価格にばかり注目が集まっているが、今回、吉野家が打ち出したいのは、実は「あの時の味」だ。

 2003年に牛海綿状脳症(BSE)の発生により、米国からの牛肉の輸入が規制されるようになった。この規制が牛丼や焼き肉などの外食企業に与えた影響は大きかった。牛肉の価格は高騰し、調達コストが高まったうえに、味が変わってしまったのだ。

 規制は米国やカナダからの輸入は20ヵ月以下の牛に限るとした。「20ヵ月以下に規制すると言っても、実際には幅を持たせてさらに若い14~15ヵ月しか入ってこなかった」(大手牛丼チェーン関係者)。

 実は、その若さの牛は牛丼の味には最適ではない。ぴったり20ヵ月くらいの牛が日本の牛丼にはマッチするというのだ。

 さらに、米国産牛がトウモロコシなどの穀物を餌としているのに対し、輸入に規制のないオーストラリア産の牛は牧草を餌にしているケースが多い。米国産が脂肪分が多いのに対し、オーストラリア産は硬く、肉質がまったく異なる(ただし、吉野家は牛焼肉丼などをのぞき、牛丼には原則的にオーストラリア産を使っていない)。

 一時期は肉が手に入らず牛丼そのものが提供できなかった。加えて、提供が再開しても月齢とエサの違いなどから、牛丼の味が変化していたため、かつてのファンは市場から離れていった。

 中でもBSEの影響は吉野家に大きかった。