組織は本業に焦点を合わせ成果を上げて収入を得る<br />他の仕事はアウトソーシングするダイヤモンド社刊
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「サービス労働はすべてアウトソーシングされるようになる。このことは特に、建物の保守管理をはじめとする支援的業務や、かなりの種類の事務的業務について起こる」(ドラッカー名著集(8)『ポスト資本主義社会』)

 アウトソーシングの流れは止まらない。サービス労働の重要度が高まり、創造性と生産性が求められるからである。特に、トップマネジメントへの昇進が事実上不可能になっている領域でアウトソーシングが必然となる。

 ドラッカーはこういう。「それは、いかにコストがかかっていようとも、トップマネジメントの内の一人として大きな関心を持たず、十分な知識を持たず、面倒を見ようとせず、重要とも思っていない領域である。それは、組織の価値体系の外の領域にある仕事である」。

 病院の価値体系は、医療の価値体系である。医師と看護師の世界である。彼らは、治療を中心に据える。大学の価値体系は、真理の探究と学生の教育である。それは、教授たちの世界である。

 したがって、建物の保守管理、支援的な業務、事務的な業務は、たとえ病院や大学の全コストの半分を占めていたとしても、大きな注意は払われない。もちろん、それらの仕事から病院や大学のトップマネジメントに昇進していく者はいない。

 ところが、メンテナンス会社にとっては、それらの仕事こそ本業である。存在の理由であり、ミッションである。それらの仕事にかかわる創造性と生産性が、マネジメント上最大の関心事である。

 メンテナンス会社には病院のメンテナンスの仕事を直接知っている人間が、すでにトップマネジメントにいる。カネと時間と頭を投入する責任ある人たちがいる。病院のトップマネジメントには、そのような人は一人もいない。

 それどころか、メンテナンス会社では、全社員がメンテナンスの仕事を考えている。創造性と生産性の向上に必要とされる仕事に、全員が取り組んでいる。それが本業であり、生きがいである。

 じつは、世界最大のメンテナンス会社、サービスマスター社を育てたのが、ドラッカーだった。

「ポスト資本主義社会の組織は本業に集中する。本業以外の仕事は、多様な業務関係のもとに他の組織とコラボレーションする」(『ポスト資本主義社会』)