米国内科医師会の年報に載った報告によると、ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)など、ω(オメガ)3系脂肪酸の血中濃度が高いほど、全死亡リスク、特に心疾患死が低下するようだ。

 調査研究対象は、米国在住の平均年齢74歳の健康な男女、2692人。血中脂質や心血管疾患のリスク因子を調べ、1992~2008年の間、追跡した。期間中に半数以上の1625人が死亡、そのうち心血管疾患死は570人だった。また重度~軽度の心臓病が合計730例、同じく脳卒中が406例で認められた。

 血中ω3系脂肪酸濃度が最も高い人から最も低い人までの値を5分割して、それぞれの疾患との関係を調べた。その結果、ω3系脂肪酸濃度が高い人ほど脳・心疾患の発症リスクが低下。最も血中濃度が高い人は、最も低い人に比べ65歳以上で平均余命が2.22歳延びていることがわかった。

 脂肪酸別では、DHAが冠動脈疾患関連死を40%下げ、鯨油やアザラシの肉など海獣類に豊富なドコサペンタエン酸(DPA)は脳卒中関連死を、EPAは非致死性の心臓病リスクを下げる傾向が見いだされた。また、3種類とも血中濃度が高い人は、全死亡リスクが27%低下していたのだ。

 今回の研究のポイントは、いわゆる「魚油サプリ」ではなく、普通の食事での魚摂取量と死亡リスクの低下を証明したこと。ω3系脂肪酸は、抗動脈硬化作用や抗炎症作用のほか、免疫活性化作用が知られている。加齢とともに如実に衰えるのは血管と免疫なのだから、毎日の食生活でその改善が期待できるのは朗報だ。

 研究者は「1日当たりω3系脂肪酸量にして400ミリグラム以上、週に2皿の魚料理」を推奨しているが、日本人の食事摂取基準ではDHAとEPAの推奨量は合計で1日1グラム。イワシの丸干しなら4、5本、晩酌のよきお供「サバ缶」なら1缶で十分に摂れる。鰹も優秀な供給源だが「初鰹」はさっぱり系なので、脂がのった「戻り鰹」まで待つこと。

 旬の海の幸を満喫できる国にいるのだ。1日1食、魚を食べよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド