「米国でのバッシングから日本政府はトヨタを守らないのか」

 トヨタ自動車の豊田章男社長が米国で涙をぬぐう姿が報じられた2月25日、外務省には一般国民からの電話が立て続けに鳴った。

 豊田社長は中間選挙を控える議員たちによる政治ショーとも化した米議会公聴会へ出席、大量リコール問題を糾弾された。その直後に開いた米国の販売店関係者らとの集会で感極まって泣いた。公聴会の模様と豊田社長の涙に少なからぬ日本国民が驚き、動揺した。

 米国でのトヨタ批判に日本政府は表面化するような大きな動きは見せていない。しかし、少なくとも一部の民主党議員、外務省、経済産業省といった政府関係者たちは密かに支援に奔走している。

 2月中旬に駐米大使がトヨタ批判の姿勢を強めるラフード米運輸長官と電話会談したが、こうした表向きのものだけではない。同じ頃、トヨタが進出しているケンタッキーなど4州の知事は連名で米議会に書簡を送り、公平な議論を要求した。その連携の橋渡しを含め、米国でトヨタ糾弾派議員に対抗して擁護派が現れてきている陰に日本政府関係者らの人脈や動きが見え隠れする。

 現段階では、こうした個々の動きが“援護射撃”の限界だろう。小泉・ブッシュ時代とは違い、政権交代後の日米両首脳はそこまで親密な間柄にあるわけではない。それどころか両国は米軍普天間基地移設問題などを抱えており、ともすれば日米交渉の具に化けるリスクも無視できない。

 そもそも米国でバッシングが過熱した要因は複数あり、政治的思惑だけが理由ではない。安全への信頼を裏切られた消費者たちの怒りが存在する。である以上、「政治の安易な介入は反発を受ける」と政府関係者。まずはトヨタ自身が最大限の自助努力を尽くさなければならない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)

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