合成ゴムのトップメーカーは今年度、売上高4070億円で過去最高を更新する見込み。世界で生き残るには何が必要か。

JSR社長 小柴満信<br />時価総額1兆円が生き残る条件<br />第3の柱育成にはM&A活用もPhoto by Toshiaki Usami

──経営課題にまず掲げているのが、合成ゴム事業の原料確保と設備投資です。この進捗状況は。

 低燃費タイヤ原料「S-SBR」の需要は年率2桁で伸びるとみています。一方でシェール革命により、S-SBRの原料であるブタジエンが世界的に逼迫することが予想されます。シェール由来のエチレン(化学品の基礎原料)からはブタジエンが作れないからです。

 ブタジエンは世界で1000万トン程度あり、うち180万トンは燃やされるなどして使われていません。経済的かつ安定した調達のため、そうした休眠ソースにも手をつける取り組みをしています。

 また、今年はタイでS-SBRの新工場を立ち上げます。第1期は年産5万トンで、第2期も早くやりたいなと考えています。タイの次の投資もすでに検討しています。

──他社も同様に設備投資に熱心です。どのように差別化しますか。

 確かにアジアで供給過剰になると心配されていますが、競争が激化するのはローエンドの製品です。当社はミドルからハイエンドの需要を他社に先駆けて囲い込んでいます。安定した原料の確保に加えて、性能の差別化と圧倒的な生産能力、この先行者利益で競争を勝ち残っていく。