年間5000人を変える現場コンサルタントとして、日々現場でさまざまな「決断できない人」と対峙する横山信弘氏。そんな横山氏は、研修中に数々のトラップ――「罠」を仕掛ける。決断できない人の思い込みの「罠」を取り外すために、別の罠、つまり「決断の罠」を設置。罠には罠を、というわけだ。
このたび、『絶対達成する決断力のつけ方』を発刊した横山氏に、ビジネスだけでなく資格試験やダイエットまでの決断に応用可能な「三択法」を初めて公開してもらった。
「選考の逆転現象」を使って次々驚きの決断事例が出ているというが、その秘密は何なのだろうか?

精神論ではなく論理的なテクニックを紹介した初の書籍

 拙著『絶対達成する決断力のつけ方』は、なかなか決断できない人が、思い切った決断ができるロジカルな手法を紹介した書籍だ。

「選好の逆転」という心理現象を引き起こすトリックにはまることで、本人も驚くような決断をしてしまう。
「決断ができるようになる」というより、「決断ができてしまう」と表現したほうがよいだろう。
 意思決定ができない人ほど、この「選好の逆転」現象に引っかかる。
 そういう意味でも、心がけや精神論ではなく、論理的なテクニックで決断力をつける手法を紹介した、初めての書籍ではないだろうか。

「選好の逆転」現象とは何か

 それではまず、「選好の逆転」現象について解説する。
 3つの選択肢があったときに、ついつい真ん中のものを選んでしまうことは皆さんもよくあることだと思う。
 この手法は「選好の逆転」という心理現象を利用している。
「選好の逆転」とは、選択肢を示された状況や順番によって思いがけない選択をしてしまうことを言う。
 この「三択法」については、事例を紹介しながら解説していく。

 以前、ある美容室で、私は店員からヘッドスパを勧められたことがある。少し興味があったので、そのサービスを受けることにした。メニューは2種類だけ。

●Aコース 45分 7000円
●Bコース 60分 1万円

 AコースとBコースの違いは時間が異なるだけではなく、使用するアロマや頭皮マッサージの種類も違うようだったが、私にはよくわからない。
 45分で7000円、60分で1万円という価格設定も高いのか安いのか判別できず、そのときの気分で7000円のAコースを私は選んだ。

 店員さんに質問すると、ほとんどの人がAコースを選ぶという。
 Bコースのほうがお得で、絶対お勧めなのに、定員さんがどんなに強調しても、
「とりあえずAコースでいいです」
 と言われてしまうとのこと。
 あとで店長にも確認したが、やはり90%の人がAコース、10%の人がBコースを選んでいた。
 私は「何かアドバイスしてください」と、店長に相談されたので、「簡単でしょう」と答えた。
 おそらくこれを読んでいるあなたも、どうすればBコースを選ばせやすくできるか、想像できているのではないだろうか。