安倍相場に5月下旬からようやく修正反落の場面が訪れた。アベノミクスの限界だの、リスクだのという声もチラホラ聞かれた。しかし、昨年11月半ばから6カ月間、日本株TOPIX(東証株価指数)は75%、ドル円は30%以上も上昇した。これほどの期間、これほどの値幅の相場で、押し目らしい押し目もなかったことのほうが特別である。いったん調整ともなれば、それ相応の反落になるのも自然なことだ。

 株価とドル円の大幅な反落を誘発した原因の一つは、米国のQE3(量的緩和第3弾)の早期縮小観測とされる。金融緩和の下で株価が上昇する「金融相場」が、景気回復を受けて金融引き締めに向かうとき、神経質になるのはお定まりのパターンだ。ただし、金融緩和終了は米国経済が自律回復を持続できるようになったが故の「通過儀礼」である。株価はいったん反落するにしても、中長期のトレンドは上向きのままだろう。

 日本株の下落が相対的に大きいのは、それまでの上昇が速く大きかったことの揺り返しだ。グラフに見るように、昨年11月半ばを起点に日米株価とドル円を対比すると、安倍相場の当初3カ月の日本株の上昇率はドル円と米国株の上昇率の掛け合わせでほぼ説明できる。日本株買いの主役である外国人から見ると、日本株の上昇分から円安分を除くと、米国株のパフォーマンスと特段変わらなかった。

 しかし、アベノミクスの「異次元緩和」が有言実行との確信が強まり、海外の保守的な投資家、国内では個人投資家が遅ればせながら日本株買いに参入した。こうして日本株は「円安×米国株」を超えて過熱気味に上昇した。昨今の相場の調整ではこの上振れた部分がほぼ解消されつつある。さらに相場が下落すれば、国際株式投資の為替相場を通じたバランス上、外国人の押し目買いが次第に優勢になるだろう。