とうとう33万部を超えた佐々木圭一氏の『伝え方が9割』に、早くから強い関心を示していた経営者が藤田晋氏。佐々木氏もすぐに買って読んだという『起業家』がベストセラーとなっている日本を代表する起業家の一人、サイバーエージェントの社長だ。二人の対談をお届けします。(取材・構成/上阪徹 撮影/小原孝博)

誰にでも起きそうなことが疑似体験できる

伝え方を身につけたら、日本企業は強くなる<br />【サイバーエージェント藤田晋×佐々木圭一】(前編)藤田晋(ふじた・すすむ)
株式会社サイバーエージェント代表取締役社長。1973年福井県生まれ。97年、青山学院大学卒業後、人材会社の株式会社インテリジェンスに入社。翌98年に株式会社サイバーエージェントを設立、代表取締役社長に就任。2000年に史上最年少(当時)の26歳で東証マザーズ上場。著書に『渋谷ではたらく社長の告白』『藤田晋の成長論』、共著に『憂鬱でなければ、仕事じゃない』『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』など。渋谷ではたらく社長のアメブロ http://ameblo.jp/shibuya/

佐々木 藤田さんのご著書『起業家』は、2回読ませてもらったんです。

藤田 ありがとうございます。

佐々木 最初は起業家になるための方法論やポイントが書かれた本だと思っていたんです。ところが、まったく違っていた。
 会社を立ち上げ、Amebaを作り、初めの数年はうまくいかなくて、そこからいろんな角度から自分を変えたり、会社を変えたり、人への伝え方も変えることで成功した。それが、ストーリーで描かれていて、とても勉強になりました。
 最近は本をさっと読める技術を身につけつつあるんですが、この本はそれができなくて、1ページずつちゃんと読まないといけないと思って、相当時間をかけて読んだんです。

藤田 だいたい1時間足らずで読んだという感想が多いんですけどね。

佐々木 1時間では、読めなかったです。

藤田 業界も特殊ですし、上場企業の経営者ならではの話もあり、ちょっとわかりづらいだろうと、読みやすくなるよう、意識したんです。

佐々木 言葉の使い方は、一般の人でも、わかりやすいものになっていました。でも、とにかく話がリアルで生々しくて、思い切ったものになっていて。

藤田 幻冬舎の見城徹社長が「著者が一番言いたくないことを書かせるのが、いい編集なんだ」という話をされていたんですが、担当編集に脅されたわけではないものの、とりあえず全部出してしまおうという感じで書いたんです(笑)。

佐々木 僕はネット系の会社のことをそんなに知らないし、経営に詳しいわけでもないですが、藤田さんの横にいて、一緒に体験をさせてもらったような気がしました。
 起業するために具体的に役に立つ、というだけでなく、ピンチのときにどう意志を持ち続けるか、うまくいかないときにどう自分自身をチェンジするか、まわりの人にどういうふうに伝えていくか、など大きさは違っても誰にでも起きそうなことを、疑似体験できる本だと思いました。