晩婚・少子化と、今日本では結婚に対する価値観が揺らいでいる。とかく世間体に左右されたり、周りからの圧力が生まれやすいこの国において、そもそも幸せな結婚とは何なのだろうか?大好評の「留学ルポ」連載第6回は、現地インタビューを通して、幸福大国デンマークの結婚観からパートナーの見つけ方、日々の幸せの感じ方までを浮き彫りにする。

出産してもすぐに結婚しないカップル

 デンマーク人夫婦のクヌッドとグリートの家にホームステイをさせてもらっていたときのことです。コペンハーゲンで働いている長女のトーラさんが帰ってくるというので、週末に皆で一緒に昼食をすることになりました。

 トーラさんと食事をしながら話しているうちに、結婚の話題になりました。そのとき、彼女のある言葉に耳を疑いました。「そういえば、子どものころ両親の結婚式に出席したときのことを覚えているわ」

 クヌッドとグリートにはトーラさんを含め4人の子どもがいますが、全員揃って彼らの結婚式に参加したと言うのです。

 日本であれば結婚してから妊娠、または妊娠したとわかった時点ですぐに結婚するのが主流であることに対して、夫婦円満なクヌッドとグリートがなぜ子どもが4人産まれるまで結婚しなかったのか、また、周りの人々がそのことについてどのように考えていたのかとても気になりました。

 彼らのケースが特別なのか疑問に思い、オーフス大学の教授でデンマークの結婚市場について研究されているミケル・スバーさんに話を聞きました。

「今デンマークでは、ほとんどの第一子は両親が結婚する前に産まれます。彼らは同棲をしている場合が多く、こういった自由な考え方は北欧の特徴で1960年代の左翼、ヒッピーのムーブメントから広まり、現在は特にデンマークの若者世代では主流になっているのです」

 デンマークでは法律上婚姻に必要な書類は提出せずに、一緒に住み生活をする事実婚というスタイルが一般的です。事実婚の人が実際に結婚する場合は、パートナーのどちらかが亡くなった場合の財産相続を考慮するなど現実的な理由によることが多いようです。出産や子育てを、結婚よりも優先するデンマーク人にとって結婚とは一体何を意味するのでしょうか。