タイ大手銀に過半出資する<br />三菱UFJ買収戦略の内幕メインバンクを務めるホンダと親密で、 自動車ローンに強いアユタヤ銀への出資は「うち以外無理」と幹部は話す
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 千載一遇のチャンスだった。2012年9月、経済成長が続くタイで、資産規模5位のアユタヤ銀行(預金残高約2兆1600億円、貸出残高2兆6100億円、純利益460億円、12年時点)の株が売りに出されるとの情報が、世界の金融機関を駆け巡った。

 売り主は、当時約33%の株を保有していた米ゼネラル・エレクトリック(GE)の金融子会社、GEキャピタル。07年のアユタヤ銀への出資後、面白いように株価が上昇し投資リターンが膨らむ一方で、ドッド・フランク法など米国の金融規制強化の網に引っかかり、事業再編を余儀なくされていた。

 情報を受け、アジア事業を強化している日本の銀行勢は一瞬、色めき立ったが、すぐに壁にぶち当たる。タイの単一持ち株(シングル・プレゼンス)規制によって、アユタヤ銀に出資した場合、現地に開設している支店を統廃合しなければいけないためだ。

「過半出資するしかない」。規制を目の前に他の邦銀が二の足を踏む中で、三菱東京UFJ銀行(BTMU)は躊躇しなかった。証券業務で資本関係があり、GEの財務アドバイザーとなっている米モルガン・スタンレーの情報も生かしながら、すぐに昨秋の1次入札に向けた準備に取りかかった。

規制を打ち破った突破口

 過半出資への戦略を練る中で、最大の壁となったのは、外国銀行による出資を49%以下に制限する外資規制だ。この規制を乗り越えない限り、アユタヤ銀への出資はあり得ない。

 打開する糸口はないか。模索する中で見いだした突破口が、過半出資を可能にする三つの例外規定だった。1997年のアジア通貨危機以降、銀行破綻を防ぐなどの目的で、数回利用された経緯があり、直近では10年に中国の最大手、中国工商銀行がタイ政府の承認の下、例外規定を使って現地の中小銀行を買収している。