現在、起業ブームと言われる中で多数の起業家が生まれている。スタートアップに「想い」が必要であることはもちろんだが、企業である以上、やはり「企業戦略」は必要だ。本連載では、グロービス・キャピタル・パートナーズのパートナーとして多数のスタートアップに投資し、信頼関係を築いてきた高宮慎一氏に、今の日本の起業家に必要な戦略論をまとめてもらう。
まずは第1回にふさわしく、高宮氏とスタートアップとのかかわりから話を始めてもらおう。

ぼくらはどのような人生を生きるべきか?

 今ほど起業にチャンスがあり、しかも求められている時代はありません。古き良き高度成長期の大企業神話は崩壊しました。2013年現在ソニー、パナソニック、シャープといった日本を代表してきたような企業が不振に喘いでいます。それとともに終身雇用や従業員を家族のように扱う家族主義も崩壊しました。また、カネボウやオリンパスは過去の粉飾決算の問題が突如噴出し、一夜のうちに素晴らしい業績は嘘だったことが発覚し、社会的信用までも失ってしまいました。従業員にとっては、プライドを持って信じていた会社に裏切られ青天の霹靂でしょう。大企業の不振を反映する形で就職氷河期は万年化しています。大学新卒の内定率は年々下がり2011年3月は調査始まって以来最低の74%だったそうです。

 私たちはどのようにキャリアを考えればよいのでしょうか?まずは私たち自身のシゴトに対する考え方を変えるべきでしょう。生活の糧や金銭的な豊かさをえるための手段としてのシゴトから、自分の想いや成し遂げたいことを実現する自己実現のための活動として位置付けるべきでしょう。金銭の多寡を基準に自分の人生を評価することほど空しいことはありません。右肩上がりの経済成長が終わった以上、皆が皆金銭的な意味で成功するのは無理なのです。ですから、自分の中にある想いを明確にし、それを実現するためにコトを起こすこと=スタートアップすることこそが幸せな人生に通じるのです。 

同じ時代の冒険者たち

 私は、所謂“76世代”で、バブルの旨味を享受することがなかった世代です。また大学を卒業する1999年は(といっても私は浪人しているので、1年遅いのですが……)失われた10年、すなわち平成不況の真っただ中で、就職氷河期という言葉が言われだした年でした。

 一方で、大学時代はインターネットバブルと重なっており、イケてるヤツほど大きなチャンスと捉え、学生起業をしたり、ネットベンチャーで働いていたりしました。そういった面白い連中が出入りしていた溜まり場があったのですが、今になって気づいてみると現在私が勤務するグロービス・キャピタル・パートナーズの投資先で、ビットバレー運動を提唱していたネットエイジというベンチャーでした。ネットエイジには創業者の西川さんを始め、76世代を代表する起業家のグリーの創業者の田中さんや山岸さん、ネットエイジの投資先のミクシィの創業者の笠原さんなど、錚々たる面々の起業家たちが集っていました。また、現在のグロービス・キャピタル・パートナーズでの同僚でもあり、ベンチャー・キャピタリストとしての師匠筋にあたる仮屋薗さんも、投資先であったネットエイジの経営に社外取締役として参加していました。