中国の外貨準備に変調の兆し <br />日米金利の不安定化要因に米財務省にとって国債の最大の「得意先」となる中国の動向には、神経をとがらさざるを得ない
Photo by Hiroshi Tanaka
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 3兆4426億ドル(約344兆円、3月末時点)もの資金を抱え、世界最大の「ファンド」ともいえる中国の外貨準備に、変調の兆しが見え始めた。

 世界経済の牽引役だった新興国の成長に陰りが見え、世界のマネーが先進国へと逆流する中で、中国においても資金流入が急速に縮小。2012年には、中国の資本・金融収支が14年ぶりに168億ドル(1兆6800億円)の赤字となった。

 中国国家外為管理局は、4月初めに公表した12年版国際収支報告書の中で、「さらなる資本の流出を排除できない」との見解を示している。

 海外から中国への資金流入が細った結果、起こったのが10年以上にわたって膨張していた外貨準備高の頭打ちだ。

 2000年代後半以降、外貨準備高は毎年40兆円前後にも及ぶ猛烈な勢いで拡大。世界全体の外貨準備高の3割を占めるまでに膨張していたが、12年は前年の3分の1にも満たない13兆円の増加にとどまった。今年に入っても、増加ペースは鈍いままだ。

中国が売る米国債の不気味

 中国の外貨準備の変調は、米中長期国債の売買にも見て取れる。4月の動向を見ると、中国は2カ月連続の売り越し。国債をはじめ米財務省証券を最も保有しているのは中国で、1兆2649億ドル(126兆円)。2位は日本で1兆1003億ドル(110兆円)だ。

 中国はこれまで、世界各国からの資金流入に伴う通貨高を抑制するため、人民元を売ってドルを買う為替介入を繰り返してきた。その結果、介入を担う中国人民銀行の外貨準備高は、10年前に比べ実に11.5倍にも膨らんでいる。

 為替介入に伴って購入した資産の多くは、米国債などドル建ての資産だ。外貨準備のうち6割強がドル建て資産とみられている。