4月1日、日銀が発表した「企業短期経済観測調査」(通称:短観)は、現在、わが国の経済が戦後最大の危機に直面していることを如実に表している。

 大企業製造業部門の業況判断DI{「景気がよいと思う比率」(%)-「景気が悪いと思う比率」(%)}がマイナス58となり、第一次オイルショック後の75年の最悪期だったマイナス57を越えて、過去最悪となった。

 そうした企業部門の落ち込みに伴い、雇用・所得環境も急速に悪化しており、今年2月の完全失業率は4.4%と前月対比0.3ポイントも落ち込んだ。

 同月の有効求人倍率も0.59倍と、前月比0.08ポイントの低下してしまった。経済統計を見る限り、昨年秋から始まった景気急落は、留まることを知らないようだ。

 一方、今回の景気急落の震源地である米国の最近の経済指標を見ると、意外にもかなり“明るい兆し”が出始めているように見える。たとえば、2月の「新築一戸建て住宅販売」は前月比4.7%増と、10ヵ月ぶりの高い伸びを示した。

 また、企業の設備投資の趨勢を表すといわれる「耐久財新規受注」は、2月に市場の事前予想に反して前月比3.4%増と増加に転じた。特に米住宅市場関連の指標については、2月の住宅着工件数、同中古住宅販売で前月比プラスが続いている。

 前年同月比で見ると依然、大幅減少が続いているものの、「今回の経済危機の元凶である米住宅市場に変化の兆しが見え始めた」との声も出ている。こうした経済指標を見ると、「景気の底打ちは近い」との見方が説得力を持ち始めているように見える。

好調すぎる経済指標の
“信憑性”を見極めるべし

 ただし、経済専門家のなかには、そうした見方に疑問符をつける人も多い。主な理由は、「経済指標は経済活動の一部を反映しているに過ぎないことに加えて、金融機関が抱える不良資産というストックベースの重荷を考慮していない」ということが挙げられる。

 特に、今後、GMやクライスラーをいかに扱うか、あるいは大手金融機関の経営状況がどのような展開を見せるかによって、紆余曲折があることが予想される。米国経済の先行きは「依然、予断を許さない状況」と考えるべきだろう。