今回は、ブラック企業でいじめ抜かれ、「殺される」と脅える社員らの座談会の模様を紹介しよう。参加者は、上司から殴られた女性、セクハラをされた挙げ句雇い止めにされた女性、そして前回の記事で紹介した、うつ病になり、「もう、車に飛び込んで死んでしまいたい」と嘆く男性の3人だ。座談会当日は、彼らに労働相談を行ってきた労働組合の役員も加わった。

 座談会は約1時間30分。その8割を記事にした。2割は、彼らが勤める会社などが特定され得る可能性があるため、省略した。会話中の数字、下線付きの太文字部分については、筆者がこの20年近く労使紛争を取材した経験を基に、記事の後半で補足し、持論を述べたい。

 狙い撃ちのいじめにしろ、会社公認のリストラにしろ、その最前線では「能力」や「実績」とはさほど関係なく、「排除の論理」が押し通されていく。辞めていく人の声がメディアで取り上げられることは、ほとんどない。そして、労働の現場を知らない人たちにより、「成果主義の下、能力が低いから止むを得なかった」という話が創り込まれていく。

 こうした現状に警鐘を鳴らすため、今回のような座談会を通して、「声なき声」に耳を傾けたい。彼らの声には、日本の職場が抱え込む問題が凝縮されている。

(座談会出席者)
 
Aさん:50代後半の女性。大手の会計事務所に正社員の事務職として20年近く前から勤務していたが、役員である奥様(所長の配偶者)から目をつけられ、いじめ抜かれる。現在、ユニオンに入り、事務所と交渉中
 
Bさん:40代前半の女性。小売業界の企業で7年前から派遣社員として働いていたが、今年3月に雇い止めとなる。現在、ユニオンに入り、団体交渉を求めている
 
Cさん:前回の記事で紹介した男性。50代半ば。大企業の課長職。上司から嫌われ、いじめられ、うつ病になりながらも、ユニオンに入り、団体交渉を求める
 
関口:労働組合・東京ユニオンの副委員長・関口達矢さん