阿鼻叫喚の北米自動車市場で、意外にも中堅メーカーの富士重工業(スバル)が堅調に販売を伸ばしている。

 昨年度、大手各社の販売台数が数十パーセントも減少したなか、スバルは新型フォレスターが奮闘。減少は1.5%にとどまり、北米工場は長期的な生産停止をせずにすんだ。

 そして今年度は対前年比3.8%増を見込み、主なブランドで唯一北米販売増となる。牽引するのは北米市場を意識し大型化したスバルの基幹車種、新型レガシィだ。

 「スバルに対するディーラーの期待が高まっている」(森郁夫・富士重社長)。米国では複数のブランドを併売するディーラーが多いが、クライスラーが破綻してから、スバル車と併売していた既存販売店にはローン貸し付けの援助をしている。GMが破綻した場合も同様の予定で、GMの元販売店と新たに契約することを視野に入れ、現在全米に約600ある販売店の維持・拡大を狙う。

 ただ、GMが契約解除を予定している約2600店はそもそも優良店ではないわけで、スバルブランドの浸透が難しい可能性が高く、店舗数を単純に追う新規契約は初期コストがかかる。また、スバルが弱い米国南西部は他の日系メーカーが多数出店する激戦区で、簡単に入り込めるわけではない。もともとスバルは数年前から北米販売強化策として、店舗ごとの採算見直しや質向上の取り組みをしてきただけに、拙速な拡大戦略を取ることはなさそう。

 今、スバルが北米で堅調なのも、車種の少ない企業規模だからこそ。早ければ2011年にハイブリッド車を投入することを表明したが、「量では大手にかなわないので、コスト競争はしない。スバルの独自性をつけて切り込む」(森社長)と質向上路線を貫く構えだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  柳澤里佳)