国税庁のホームページには、所得税の確定申告書作成コーナーがある。

 確定申告書の作成には、他欄からの転記や合計の計算、さらには税額表を参照しての税額の計算など、単純ではあるけれども間違いやすい作業が多い。ホームページで提供されている様式に記入してゆけば、こうした作業での間違いがなくなる。

 たとえば、「扶養控除」については、別に記入ページがあり、そこに必要事項を記入していけば、扶養控除の額を自動的に計算してくれる。また、「特定扶養控除」の対象になるかどうかを、記入した生年月日のデータから判定してくれる(だいぶ昔の話だが、特定扶養控除対象者がいたにもかかわらず、うっかり通常の扶養家族として申告していた。数年たってから気づいたのだが、遡って認めてもらうことはできなかった。そのときこのサービスが利用できていたら、税金の払いすぎはなかったはずだ)。

 また、各種の控除について、金額をいちいち他の資料で確かめなくともすむので、便利だ。さらに、各項目ごとに「よくある質問」が設けられている。たとえば、「一時所得とはどのような所得であり、その額をどのように計算するか」「医療費控除はどのような経費が対象となり、申告にあたってどのような書類を用意する必要があるか」などについて、ポップアップメニューで答えが簡単に分かるようになっている。

 また、いちど作成したデータは保存しておけるので、翌年の作業の参考にもなる。

 ここで作成した申告書を、ただちに電子申告することはできない(電子申告のためには、電子証明書とICカードリーダライタを取得し、ソフトをインストールする必要がある) 。しかし、このコーナーを用いて確定申告書を作成できるだけでも、納税者の作業負担は大幅に軽減される。

先ず隗より始めよ

 ここには、「電子政府」のあり方を考える際の重要な視点が含まれていると思う。

 第8回で述べたように、アメリカにおける電子政府の実態は、驚嘆すべきレベルになっている。そこで紹介したIRS(アメリカの国税庁)の還付額問い合わせサービスはその例だが、こうしたサービスを提供するには、大掛かりなシステムの整備が必要だ。そして、日々の運用にも大変な労力が投入されているに違いない。