来春の発着枠拡大で、総仕上げを迎える羽田空港の国際化。ところが、目玉となる米国路線の調整が難航している。時間切れが迫る中、国益と会社の利害が絡み合い羽田国際化“離陸”に暗雲が漂う。

「羽田空港は都心に近くて便利、成田空港は遠い。羽田から1日25便発着する枠を確保できれば、われわれはいつでも羽田に拠点を移す」。7月31日、東京都内で記者会見した米デルタ航空のリチャード・アンダーソンCEOは、羽田便への参入について質問が向けられるとこうアピールした。

 言葉通りに受け止めれば、羽田参入に意欲満々のように聞こえる。だが、実態はまるで違う。ちょうど同じ時期、来年3月末の羽田国際線拡大に伴う発着枠の配分をめぐり、国土交通省航空局と米国当局との間で行われた航空交渉は、決裂の危機を迎えていた。

「米国側から何もボールが投げられてこない。これではお手上げだ」──。国際交渉の隙間から漏れ伝わってきたのは日本側のこんな悲鳴だった。

 羽田空港の滑走路増設に伴う今回の国際線枠はまさに最後の出物で、年間3万回、1日40枠の配分が対象となる。航空交渉では相手国と同じ枠数を割り振るのが基本で、英仏独など8カ国と航空交渉が妥結している(下表参照)。

 米国とは、昨年4月の非公式会談から始まり複数回にわたる交渉を重ねてきたが、暗礁に乗り上げてしまっている。

 10月10日には、世界中の航空会社がIATA(国際航空運送協会)に3月末からの「2014年夏ダイヤ」の路線を申請する。国同士の交渉は、その前に決着している必要がある。タイムリミットが刻一刻と迫る中、目玉となるはずの米国路線開設は見送りとなる可能性が高まってきた。

 背景には米国の航空会社の足並みがそろっていないことがある。デルタ、ユナイテッド航空、アメリカン航空の3大陣営に分かれる中、とりわけ冒頭に登場したデルタが乗り気でないという。