イノベーションと起業家精神
ダイヤモンド社刊
2100円(税込)

 「最近におけるもっとも基本的な世界観と認識の変化、真に歴史的な転換ともいうべき変化は、法律と政府機関もまた、神ではなく人がつくるものであって、いずれも急速に陳腐化することが認識されたことである」(『イノベーションと起業家精神』)

 しかるに今日でも、政治の世界だけは、政府が行なうものは社会の本質に根ざすものであり、したがって不朽であるとの昔からの前提が堅持されている。

 そのため、政府が行なう古くなったもの、陳腐化したもの、生産的でなくなったものを切り捨てるためのメカニズムがない。

 最近では、法律と政府機関を一定期間後に自動的に廃止するというサンセット方式が導入され始めた。しかし、いまだ十分に機能するには至っていないという。

 ドラッカーは、その原因は3つあると指摘する。

  第一に、法律や政府機関が役に立たなくなったことを判定する客観的な基準がないことである。

 第二に、廃止の具体的な手続きがないことである。 
  
 第三に、それら廃止されるものの代わりになるものをどう導入するか、そのための具体的な方法がないことである。

 しかし、それもこれも元はといえば、政府に倒産の機能がないためである。

 「サンセット方式を効果あるものとするための原理と方法の開発こそ、ただちに行うべき重要な社会的イノベーションである。社会がそれを必要としている」(『イノベーションと起業家精神』)