“トラブル通貨プロジェクト”。S.H.Hankeジョンズ・ホプキンス大学教授は、混乱状態にある通貨のインフレ率を推計している。

 アルゼンチンでは政府が公表するインフレ率は実態よりも大幅に低いのではないか? との疑念が昨年から国民の間で話題になっていた。IMFもそれを問題視して警告を発した。アルゼンチンに限らず、インフレが高騰して国民の不満が著しく高まると、インフレ率を低めに表示したり、公表をやめてしまうケースが見られる。

 そこでHanke教授は、ケイト研究所と共同で、6カ国の“トラブル通貨”の闇市場で取引されているレートを調査し、それを用いてインフレ率を毎月推計している。8月発表の年率物価上昇率は以下の通り(かっこ内は最近の政府公式発表)。エジプト19.7%(7月10.3%)、アルゼンチン42.5%(6月10.5%)、イラン52.5%(6月35.9%)、北朝鮮53.5%(未公表)、シリア199.3%(5月40.2%)、ベネズエラ238.9%(6月39.6%)。

 エジプトの公式インフレ率は“良心的”なほうに見える。もっとも、現在の混乱が続くと生産は一段と減少して物資不足となり、実勢為替レートが下落して輸入物価は高騰するであろうから先行きは心配である。シリア、ベネズエラでは日用品が急騰し、生活に困窮する人が増えている。