組織の良否は<br />そこに成果中心の精神があるかどうかによって決まるダイヤモンド社刊
2100円

「組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。天才に頼ることはできない。天才はまれである。あてにできない。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。同時に、組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。要するに、組織の良否は、そこに成果中心の精神があるかどうかによって決まる」(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)

 人間は多様である。しかも、でこぼこした存在である。あることを得意とし、あることは不得意とする。得意なことを伸ばすのは簡単だが、不得意なことを直すのは至難である。そこで不得意なことを意味のないものとし、得意なものを引き出して組み合わせることが必要になる。

 ところが、組織の中に、何事も成果を中心に考え、行動するという成果中心の精神が根付いているならば、人びとの得意なことだけを組み合わせるという手品が、いとも簡単に行える。

 成果中心の精神を持つための方法は簡単である。第1に、あらゆることの焦点を成果に合わせることである。第2に、あらゆることの焦点を機会に合わせることである。第3に、人事は真摯さを絶対の条件として行うことである。

 ドラッカーは、実例をもって教える。かつての帳簿係が組織の成長に伴い、50歳で経理担当役員になったものの、仕事をこなせなくなった。人は変わらないのに、仕事が変わった。だが、ずっと真摯に働いてきた。

 ドラッカーは、そのような真摯さに対しては、真摯さをもって報いなければならないという。ただし、担当役員のままにしておいてはならない。仕事上差し支えがあるだけではない。士気を低下させ、マネジメントへの不信をもたらす。

 だが、退職させるのも間違いである。正義と礼節にもとる。

「成果中心の精神を高く維持するには、配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であることを認識する必要がある。それらの決定は、人間行動に対して数字や報告よりもはるかに影響を与える。組織の中の人間に対して、マネジメントが本当に欲し、重視し、報いようとしているものが何であるかを知らせる」(『マネジメント[エッセンシャル版]』)