「ガソリンスタンドの在庫は平均2~3日分。(高い税率がかかったままの)在庫がなくなる4月3日までは派手な値下げは自粛しようと周囲のスタンドと話し合っていたが、1日になってふたを開けてみたら次々と値下げに踏み切るところが出てきた」

 ガソリン税の暫定税率期限切れを迎えて、ある都内のスタンド経営者は匿名を条件にこう語った。この地域協定は違法なカルテルに当たる可能性がある。こうした協定は地域ごとに秘密裏に行なわれていることが多い。

 今回に限っていえば、政治があまりにも無策であった。レギュラーガソリンで1リットル当たり25.1円という大幅値下げをするのなら、混乱を避けるためスタンドに残っている高い税率のガソリンについては税金を還付するなどの措置を取るのが当然なのに、なんの対策も打たれなかったからだ。協定はそんな状況を見越しての自衛策になるはずだった。

 ところが今回は、業界の“談合”を粉砕してしまうほどのガソリンの値下げ圧力が全国を襲った。全国石油商業組合連合会によると、1日午後2時現在でも福島県会津若松市内、大阪府南部、鹿児島県・奄美大島などで値下げが浸透しており、まだら模様ながら全国各地で値下げが広がっていることが確認されている。多くのスタンドが、暫定税率が乗っかったままの在庫を抱えていることを考えれば赤字覚悟での値下げである。

 さらに値下げ幅は25円程度であるのに対し、現実の卸価格は20円程度しか下がっておらず、スタンドの収益は悪化している。3月のレギュラーガソリンは1リットル当たり140円台前半が底値だったが、いまや110円台中頃も出現。「まだまだ下がる」とある低価格スタンドの経営者は予想する。

 各地で行なわれていたという協定が通用しなかった理由は簡単だ。日本はスタンド数が多過ぎるのだ。「ある元売りに言わせれば将来、2万店程度に半減する」とこのスタンド経営者。暫定税率期限切れは、業者淘汰の背中を押しそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)