価格上昇が止まらない。

 原燃料高に苦しむ企業の「価格転嫁」が進む一方で、消費者は景気の減速感から低価格志向を募らせ、「少しでも安いもの」へと流れ始めた。その結果、今年に入ってさまざまな業界の商品やサービスのシェアが大きく変動している。

 特に目に付くのは、値上げによる販売不振に悩む業界だ。よい例が即席めんの業界で、最大手の日清食品は、小麦粉価格高騰を受けて主力商品「カップヌードル」「チキンラーメン」などを値上げし、販売減に陥った。マルハニチロ食品(マルハニチロホールディングス)などの加工食品業界も同様。冷凍食品が「中国産毒入りギョウザ騒動」の煽りを受けたばかりか、原材料高で特売(安売り)を減らしたため、缶詰製品も販売減という苦境ぶりだ。菓子業界においては、コスト圧力や値上げによる販売減により、新工場の立ち上げを延期した森永製菓のようなケースまである。

 一方、逆のパターンがビール業界。他社が価格引き上げを一斉に行うなか、価格を据え置いたサントリーのシェアは、サッポロを抜いて初めて業界3位に躍り出た。各業界を見渡せば、こういった企業も少なくない。

 だが、価格据え置きによってコストが増大し、利益が逼迫しては元も子もない。一過性の追い風でシェアを伸ばしている企業の多くも、いずれ価格転嫁に迫られる可能性が高いため、手放しには喜べないのが現状だ。

 ところが、こうした巷の不安をよそに、実は従来と同等、もしくはそれ以下の価格で堅調に売上を伸ばしている企業もある。その「勝ち組パターン」とはいったい何か?

 その1つは、上昇した商品やサービスの“代替手段”として潤っているパターン。よい例が高速ツアーバスだ。「東京-大阪間のような長距離バスも伸びているが、特に東京-名古屋間、東京-仙台間など、比較的中距離の便が大きく伸びている」(楽天トラベル)

 実は、ガソリン代の高騰により、マイカーを利用せずに高速バスを利用して旅行に行く家族連れや、出張に行くビジネスマンが増えているのだ。利用者は長距離バスで50%増、中距離バスなら60~70%増(共に昨年比)というから、驚きである。かつては「狭くて眠れない」「学生が多い」というイメージが強かったものの、最近では他人と隣り合わなくて済む「3列シート」のバスも登場。夜行だけでなく昼行便も本数を増やしたため、利用客が増えたのである。