成長戦略にかじを切りM&Aを加速させる日清製粉グループ本社。製粉業界がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の影響を受ける今後、どのような戦略を描くのか。

日清製粉グループ本社社長 大枝宏之 <br />輸入自由化で製粉会社は激減 <br />リスク取りM&A加速化Photo by Masato Kato

──TPPの事業への影響は。

 製粉業界は上位4社が全体の70%のシェアを握りますが、国内には90社もの製粉会社が存在します。原料小麦の輸入が全量国家貿易のため、すべてのメーカーが同価格で原料を買えるからです。

 現在のTPP交渉のスピード感はわかりませんが、長期的には小麦輸入が自由化され、自社の原料を自社で輸入する時代が必ず来る。現在の国内勢同士の競争環境が一変し、海外勢との競争が加わる。製粉会社の数は激減するでしょう。

──輸入小麦粉に勝つためには何が必要でしょうか。

 コスト競争力と品質です。当社は約30年かけて内陸部の小規模工場を閉鎖し、臨海部に大規模工場として集約してきました。製造コスト削減効果は大きく、臨海部の工場は輸送面にも優れています。

 日本のメーカーは今海外より50%ほど高い小麦を買っています。国からメーカーへの売り渡し価格に国内の小麦農家の振興対策費用が含まれているからです。これが仮にゼロになり、海外との製造コスト差と日本までの輸送費を差し引き、全体で輸入品とのコスト差を10~20%程度にまで抑えられれば品質面での付加価値で十分輸入品とも勝負ができるはずです。

──昨年、2020年までに売上高1兆円、13年3月期に海外売上高比率を30%にまで高める中期経営計画を打ち出しました。

 今後は成長を志向していきます。現在日清は実質無借金企業ですが、今後は、中計期間中でM&A投資に2000億円程度は使う。これは上限ではなく目安です。仮に2000億円使ってもD/Eレシオは0.5倍程度です。12年には米国で9位、13年にはニュージーランド最大の製粉会社をそれぞれ買収し、グループの小麦粉の生産能力の30%以上が海外になりました。