前回は過小資本に苦悩するメガバンクを扱った。今回は、同じ業界でありながら、より身近な存在である地方銀行を取り上げる。

 全国地方銀行協会が6月17日付けで発表した「決算の概要」によれば、地方銀行の09年3月期の当期純利益(連結ベース)は▲570億円で、5年ぶりに赤字に転落した。有価証券の減損処理と不良債権の増加が主たる要因だという。

 そうした情報を踏まえて、早速、「地方銀行の雄」と称される横浜銀行の操業度率の推移をご覧いただきたい。

〔図表1〕横浜銀行の操業度率
「地銀の雄」横浜銀行の救世主?<br />自己資本を水増しする“繰延税金資産”の罠

〔図表 1〕は本連載でも再三登場させているグラフである。

 量産効果を最も発揮する予算操業度売上高を100%と置いて、実際売上高を実際操業度率、損益分岐点売上高を損益分岐操業度率、そして企業の利潤を最大化する最大操業度売上高を最大操業度率として表わしている。

 前回のコラムでも紹介した通り、〔図表 1〕の実際操業度率の推移を見ると、07年後半は「サブプライムローン問題」、そして08年後半は「リーマンショック」に、横浜銀行も揺さぶられたことを読み取ることができる。

銀行の損益分岐操業度率が40%である理由

 これも前回コラムで紹介した通り、08/12(08年12月期)まで、損益分岐操業度率が40%で推移しているのも、銀行業界の特徴だ。

 銀行などの金融機関は複雑な金融商品を扱っているが、業務処理は均質化が図られている。銀行員は頻繁に異動を繰り返しても、従前の支店と同じ業務を異動初日からこなすことができるのだ。メーカーで、工場間の転勤(例えば半導体工場から家電工場へ)が難しいのとは対照的である。