パナソニックが、ソニーのお株を奪った。

 米20世紀フォックスと組み、ジェームズ・キャメロン監督の実写3D映画「アバター」とタイアップした3D対応AV機器のプロモーションを、9月から全世界で展開するのだ。これまで、ハリウッド映画とのコラボレーションといえば、傘下に映画会社を持つソニーの十八番だった。

 今回の企画はフォックス側から提案されたもので、「映画会社として競合関係にあるソニーには持ち込みにくかったのではないか」(業界関係者)と見られる。映画各社と等距離外交をしてきたパナソニックだからこそ、白羽の矢が立ったのである。

 秋から全世界でタイアッププロモーションを展開するパナソニックだが、じつは、同社が3D対応のテレビやブルーレイディスク(BD)再生機を投入するのは2010年で、現時点では試作機しかない。それにもかかわらず、このタイミングで大規模なプロモーションに踏み切る背景には、大画面テレビ市場における同社の強い危機感がある。

 競争激化による単価下落や、LEDテレビの販売拡大で、同社は得意とする大画面テレビ市場で苦戦。06年に10%以上あった薄型テレビの世界シェアは、直近で9%程度まで低下している(米ディスプレイサーチ調査)。

 だからこそ、「3Dはパナソニックというイメージを打ち立て、商品をいちばん早く投入して先行者利益を最大化する」(小塚雅之・パナソニック蓄積デバイス事業戦略室長)戦略に打って出たのだ。

 ソニーも黙ってはいない。10年から順次、テレビ、BD再生機、パソコン、プレイステーション3の3D対応機器を投入する。

 「10年は3Dテレビ元年になる」(西口史郎・パナソニックマーケティング本部長)。前哨戦のゴングが鳴った。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)

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