「え? 東芝が!?」──。9月9日未明、突如入った一報に、大手電力会社の幹部は驚きを隠さなかった。

 内容は、東芝が米国産シェールガスの液化加工契約を締結したというもの。シェールガスは日本が輸入している中東やアジアのLNG(液化天然ガス)より圧倒的に安いため、電力・ガス会社や商社などが相次いで調達に動き、5月以降、米国政府による輸出認可が2件下りるなど日本上陸への準備は着々と整っている。

ウランと原発一体販売応用?<br />東芝シェール輸入劇の裏側東芝が契約を決めた米フリーポートLNG。すでに1件の輸出許可実績がある
Photo by Maya Wakita

 だが、それはあくまで、エネルギー業界内での話。今回は、総合電機メーカーである東芝が乗り出したことが、驚きを呼んだのだ。報告を受けた経済産業省も「当初は想定していなかった動き」(関係者)と認める。

 今回、東芝が契約を締結したのは、米テキサス州のフリーポートLNG社。すでに、中部電力と大阪ガスが5月に、第1液化設備について輸出許可を得ており、東芝は第3液化設備について許可を待つことになる。契約企業は米国で市場に流通している安価な天然ガスを仕入れて、液化後は日本を含む海外に自由に輸出できる。

LNG調達は戦国時代に

 では、東芝は調達したLNGをどこに運ぶのか。

「東芝の狙いは東京湾だ」と業界関係者は口をそろえる。東京湾では、財政難の東京電力が新規参入企業と組んで、老朽化した石油火力を高効率のLNG火力発電に建て替える計画が進む。東芝もこれを狙っているとみられている。

 事実、東芝は、「発電システム事業の拡大につなげる」としており、最先端の火力発電とLNGのセット販売を狙うことを明らかにしている。電力自由化で新規参入の発電事業者が増えると判断、「自力で安価なLNG調達ができない事業者に対して、発電設備とセットで売り込む」(経産省関係者)ことで差別化を図る考えだ。