ソニーがNTTドコモ向け携帯電話端末の生産・開発の中止を検討していることが表面化した。ソニーはスウェーデンのエリクソンとの合弁会社を通じて、「ソニー・エリクソン」ブランドで、世界で携帯端末を販売している。国内では、ドコモとKDDI向けに供給しているが、今夏以降はKDDIに特化、ドコモ向けには端末を他社からOEM調達する。

 ソニーの国内事業の大幅縮小の動きには、“伏線”があった。

 関係者の話を総合すると、じつは京セラが引受先となることで決着した三洋電機の携帯電話事業の買収に、ソニー・エリクソンが名乗りを上げていた模様だ。当初は、シャープと京セラの“一騎打ち”で買収価格を競ったと見られていたが、実際には“三つ巴”の戦いだったのだ。

 3社の狙いは、共に同じだった。三洋の携帯事業の売上高3400億円の半分を占める北米事業の獲得だ。米通信事業者スプリントネクステルという優良顧客基盤を獲得することで、海外事業強化を狙ったのである。

 三洋が携帯事業の売却意思を固めたのは昨夏だから、その時点で、ソニーは「国内縮小・海外強化」の路線を鮮明にしていたといえる。

 2007年の携帯電話の世界市場は11億4400万台。うち、日本市場は5150万台で、構成比はわずか5%にすぎない。「国内では、1機種当たり50億円以上の開発コストがかかるのに、規模拡大は望めない。世界で勝負できるソニーだからこそ、国内市場を切り捨てられるのだろう」(競合メーカー幹部)という。

 ソニーの海外強化に足並みを揃えるように、シャープが「AQUOS」ブランドを引っ提げて、中国の携帯事業へ参入することを明らかにした。シャープは国内市場の25%を握る圧倒的な首位メーカーなのだが、現状に甘んじてはいられない。

 世界3位の米モトローラでさえ、携帯事業の“身売り”を決めたほど、海外市場の競争は苛烈だ。それでも、携帯メーカーとして生き残るには、海外に活路を見出し、グローバルメーカーとしてしのぎを削り続けるしかないのだ。ライバルが、脱落するまで。

 長らく、10社以上のメーカーがひしめく乱戦が続いていた携帯電話の国内市場では、三洋や三菱電機が撤退を表明した。ソニーやシャープのように、グローバルな携帯事業への投資余力がないメーカーの再編淘汰が進むのは必至である。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)