多くの企業が、閉塞感のある経済環境から抜け出すために、新たな成長の糧を模索しており、イノベーションが期待されている。一方、企業ITはこれまで業務の効率化や生産性の向上に寄与してきたものの、ビジネス・イノベーションを創造してきたとは必ずしもいえない。

今、期待されている
イノベーションとは

 世界経済の低迷や国内市場の飽和感など依然として経営の先行きは不透明な状況が続いている。このような経営環境において、これまでの延長線上の戦略では成長が見込めないという閉塞感、さらにはこのままでは生き残れないという危機感から、何らかのブレイクスルーを求める機運が高まっているといえよう。

「イノベーション」という言葉は、イノベーション研究の始祖といわれるヨーゼフ・シュンペーターが1912年に用いて以来、経済学・経営学分野をはじめ社会科学的な用語として多用されてきた。その意味においては、特に目新しいものではないだろう。しかし、ここにきて昨今の経済環境を背景に、「イノベーション」が頻繁に語られるようになっている。

 イノベーションを「技術革新」と和訳することがあるが、イノベーションは科学技術分野における発明や発見だけを意味するのではなく、ビジネスや社会における新たな価値の創造を含んだ、より広範な概念として捉えるべきである。

 とりわけ、企業におけるイノベーションを論じるにあたっては、科学技術分野における発明や発見よりもむしろ、業務プロセス、組織、生産方式、販売手法といった非技術分野の変革に目を向けるべきである。

 イノベーションという言葉は、しばしば「過去の破壊」を想起させるが、イノベーションは必ずしもすべてを刷新するものではなく、「既存を一部代替する」あるいは「既存を補完する」というものも多く存在していることを付け加えておきたい。