最近、出世について若い人の考えかたが変わってきているかというインタビューをうけた。

 私は変わってきていると答えた。どのように変わってきたかというと、私たちの時代は、就職=就社だった。会社に入ることだけが目的で、何をするか、何をしたいかは関係なかった。

土地をタダ同然で分捕るヤツも

 だから入社すると、一斉にスタートラインに立たされ、出世レースに参加させられた。息も絶え絶えになって走り続け、同期入社組は次々と脱落し、そして最後に残った者が、出世の栄冠を掴むという具合だ。出世だけが目的と化している者も多くいた。だから恥ずかしげも無く、部下の成果を横取りしたり、他人の足をひっぱったり…。悲喜こもごものドラマがあったものだ。

 ではなぜ出世したいのか?

 出世すれば、まずお金が入る。権限を振るえる。秘書もつけば、付け届けも来る。私の知っているあるデパートの出入り業者は、出世すると見込んだ部長に土地を貸し与えて「家でも建ててください」と言った。するとその部長は、「ありがとう」とその土地に家を建てた。ずんずん彼は出世した。そしてついに常務になった。お祝いに出入り業者が彼の家に行くと、それまで木造の家だったものが、鉄筋コンクリートの家に変わっていた。そして土地はタダ同然で取られてしまったという。

 ことほど左様に、出世には見返りがあるものだ。官僚だって、出世すれば天下り先が違う。まあ、今の中国と同じだ。

 だけどそれもバブルまでのことだろう。