業務用厨房で、電気vsガスの戦いが激しくなっている。強い火力が必要なため、家庭用に比べて電化が遅れていたが、新製品の開発や、低コストによってじわじわ“勢力”を強めているのだ。

 今春に行なわれた「快適厨房コンテスト」。そのなかで、このところの電化の成長ぶりを象徴する出来事があった。オール電化厨房へと切り替えたホテルニューオータニの回転展望ラウンジ「VIEW&DINING THE Sky」が優秀賞を受賞したのだ。都心の一流ホテルにおいても、電化が進んでいる。

 電化のメリットはランニングコストがガスに比べて約1割安いこと。電気料金に電気厨房割引を用意しているほか、ガス機器に比べて調理中の廃熱ロスが少ないため厨房内の空調コストが低い。

 さらに安全で、掃除がしやすく衛生的だ。電化機器自体はガス機器に比べて約1~2割高いが、ランニングコストが安いため2~3年で元が取れるという。

 ファミリーレストランチェーンのジョナサンは、新規出店はすべてオール電化に切り替えるなど、電気の攻勢が続いている。現在の業務用厨房における電化機器比率は20%弱と、8年間で倍増したほどだ。

 一方でガス陣営も手をこまぬいているわけではない。

 「オール電化は怖くない」と言い切るのは大阪ガス。ガス陣営のなかでも早くから危機感を持ち、ガス機器「涼厨(すずちゅう)」を開発した。涼厨は廃熱を拡散させず、集中排気することで厨房内の温度をほとんど上昇させない。この1~2年は厨房メーカーと一緒にラインナップ強化に取り組んでいる。

 大阪ガスは「ガス厨房は電化厨房より省エネで、二酸化炭素排出量が少ない」とのパンフレットを作成し、電気のオハコを奪うような新たなイメージ作戦を展開する用意もある。

 侵食される一方だったガス側の反攻が本格化することで、両者の戦いはまだまだ熱くなりそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也 )