明日をつくるために<br />今日なすべきことがすでに起こった未来を探すことダイヤモンド社刊
1890円

「社会的、経済的、文化的な出来事と、そのもたらす影響の間にはタイムラグがある。出生率の急増や急減は、20年後までは労働人口の大きさに影響をもたらさない。だが、変化はすでに起こった。戦争や飢饉や疫病でもないかぎり、結果は必ず出てくる」(ドラッカー名著集(6)『創造する経営者』)

 ドラッカーは、「すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる」と言い、調べるべき領域は五つあるという。

 第1に調べるべき領域が、人口構造である。「人口の変化は、労働力、市場、社会、経済にとって最も基本となる動きである。すでに起こった人口の変化は逆転しない。しかも、その変化は速くその影響を現す」。

 こうしてドラッカーは、早くも1964年に、余暇市場の出現を指摘していた。

 第2が知識の領域である。企業は、その卓越性の基盤とすべき知識の領域においてこそ、違うものにならなければならないからである。影響がまだ現れていない知識の変化を見つけなければならない。

 第3の領域は、当然のことながら、他の産業、他の国、他の市場である。これらのものに目を配り、「われわれの産業、国、市場を変えることは起こっていないかを考えなければならない」。

 日本のある大手電機メーカーは、日本の農家はまだテレビは買えないと考えた。ところが、当時まだ中堅だったあるメーカーは、他の先進国では、豊かでもない農家がテレビを買っていることを知った。農家への販売キャンペーンは大成功した。

 第4の領域は産業構造の変化である。ドラッカーは、産業構造を見ていかなければならないと言う。同じく64年、ドラッカーは素材革命の発生を指摘した。そこから、多様な産業が大きく変化を始めた。

 第5の領域が、それぞれの組織の内部の変化である。そこにも、すでに起こった未来がある。基本的な大変化であって、まだ影響の現れていない事象を見つけることができる。

「すでに起こった未来は機会である。潜在的な機会である。一つの傾向における変化ではなく、傾向の変化そのものである。パターンにおける変化ではなく、パターンそのものの断絶である」(『創造する経営者』)