ビジネスマンにも必要な
深いレベルの「なぜ?」を問う力

 筆者が大学院生の頃、アドバイザーの先生が常に言っていたことがある。

「良い研究ってのは、『なぜ?』という問題を深く追求しているんだよ」

 私たちが高校までにする「勉強」とは、問題を解くためにはどうしたらいいかの方法がすでに確立していて、その方法を会得するために行うものだ。

 これに対して「研究」には、問題を見つけるところから始まり、その問題を解くための方法を考えることも含まれる。この「問題を見つける」のが、実は至難の業なのだ。

 ビジネスにおける問題解決は、この「研究」に近い。ビジネスについての問題は明確なように思えるが、実は問題の本質を分析、理解して、解決するための手段を編み出すのは非常に難しい。それについて大胆な行動を起こして成功させるのが、経営者や管理者の役割だ。

 2008年に共著で出版した『不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか』を書くときのきっかけも、この問題の分析がほぼ全てであったと言ってよい。この本の出版からさかのぼること1年、ビジネスコンサルタントである共著者たちが、当時の私の職場であった京都大学に訪ねてきた。

 彼らから聞かされたのは「この数年ほど、『職場の人間関係が悪い』と言う相談を経営者から頻繁に相談される」と言うものだった。具体的には、上司とコミュニケーションがうまくいかない、職場で他の人が何をやっているか知らないし、興味もない、そのせいで仕事の引継ぎやすり合わせがうまくいかない。非正規雇用社員――派遣さん――と正社員との間に溝があって、仕事が円滑に進まない、といった内容だ。

 この「不機嫌な職場がなぜ生じるか」と言う問題を分析する際には、いくつかの切り口がある。