「マンションは管理を買え」という名言があるが、その実務を担うマンション管理会社が、きちんと契約通りの作業を行っているか否かの判断は難しい。

 特に最近は、作業内容の割には高い委託管理費などに不満を感じた管理組合が、管理会社に対して値下げを要求したり、管理会社そのものを変更する事例が少なくないが、管理の質を維持するのが大きな課題となっている。

 そんなマンション管理業務をITで“見える化”し、管理の質を向上させる“秘密兵器”が登場した。

 マンション管理のコンサルタント会社、ソーシャルジャジメントシステムとKDDI研究所が共同開発した業務管理ツール「スマートシステム」がそれだ。

 これは、加速度センサーを内蔵したKDDI製の携帯電話を用い、分譲マンションの管理組合がマンション管理会社の業務を“監視”するものだ。

 具体的には、管理会社の清掃員や管理人などに、携帯電話を装着させて体の動きを計測し、時間ごとの清掃内容や巡回作業の内容を把握するシステムだ。さながら、タクシーや業務用トラックに装着し、運行状況をチェックするタコメーター(運行記録計、タコグラフ)の人間版、いわば“人間タコメーター”である。

 管理組合が管理会社に業務委託するために、詳細な業務内容を記載した「仕様書」と照らし合わせることによって、マンション管理の質の維持や向上が可能になるというわけだ。

現場の従業員からも
システム導入に歓迎の声

 見方によっては、“行き過ぎた管理”とも思え、現場からの反発も予想されそうである。

 だが、驚いたことに「このシステムを使えば、自らがきちんと作業していることが証明でき、住民からの『サボっている』という苦情対策に役立つため、現場の清掃員などからは導入を歓迎する声も少なくない」(広田茂・ソーシャルジャジメントシステム会長)という。

 マンション管理会社にとっても、昨今のマンション不況の折、新築マンションの受注は難しい。管理組合から導入を要求されれば、なかなか断りにくい状況である。普及の素地がないわけではない。

 実際に、ソーシャルジャジメントシステムによると、あるマンションでは、管理会社変更に伴って、このスマートシステムの導入を条件に募集したところ、4社からの見積もり提出があったという。

 KDDI研究所も、携帯電話の新しい活用法として注目しており、さらに高度センサーやQRコードなども併用し、精度や応用範囲を向上させて「マンション管理の必須アイテムにしたい」と期待している。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)