2013年は日本が大きな転換に踏み切った年だった。経済面では何と言っても「アベノミクス」に尽きる。黒田日銀が「異次元金融緩和」に踏み切り、10兆円を超える補正予算も手伝って、日本経済は回復基調に入った。さらに、2020年の東京オリンピック開催も決定、楽天の田中将大投手が24連勝という前人未踏の大記録を打ち立て、同球団は初の日本一にも輝いた。総じて日本経済には明るい雰囲気が戻りつつある。一方、安倍首相は年の瀬になって靖国神社に参拝し、日中、日韓との関係改善はさらに遠のいたようにみえる。

さて、新年はまず4月に消費税増税が実施される。景気への影響が懸念されるものの、財政再建には道筋がついたとは言い難い。さらに緊張高まる東アジア情勢に、安倍政権はどう対処するのか。2014年は午年。軽やかに駆け抜けることができるのか、暴れ馬のごとき年になるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。連載第11回は、当サイト連載「クリティカル・アナリティクス」でおなじみの政治学者、立命館大学政策科学部の上久保誠人准教授意見をうかがった。

①安倍政権はアベノミクスの退潮を防ごうとなりふり構わず行動する。高い内閣支持率が維持される一方で、財政再建の国際公約は事実上崩壊し、成長戦略も実現しない。ただし、これらの問題は静かに進行し、顕在化するのは2015年になる

アベノミクス崩壊が静かに進行 <br />野党再編も確実に進展する<br />――立命館大学政策科学部・上久保誠人准教授かみくぼ・まさと
立命館大学政策科学部准教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。

 安倍政権はアベノミクスの退潮を防ぐためになりふり構わず行動する。株高・円安は継続し、短期的な企業収益の改善は続き、内閣支持率は高く維持される可能性が高い。だが、日銀による金融緩和の継続、「国土強靭化」と称する際限ない公共事業の増発、党税調による特定業界への減税措置の乱発、という大規模なバラマキは族議員の跋扈をエスカレートさせ、安倍首相は次第にレイムダックに陥っていく。財政健全化の国際公約は事実上実現不可能となり、成長戦略も既存の大企業を優遇するだけで経済構造改革を妨げてしまう。これらの問題は今年静かに拡大していくが、それを国民がはっきりと認識するのは2015年であろう。