カリブ海や地中海を巡る豪華で長期間の船旅。クルーズと言えば、お金と時間に余裕がある人が楽しむものというイメージがあるのではないか。しかし、昨年あたりから、“クルーズ新時代”とでも言うべき変化が起きている。世界有数のクルーズ運航会社が、日本周辺で豪華客船を就航し、短期間で手頃なクルーズの提供に積極的に取り組み始めた。

 豪華客船でのクルーズを楽しむ人々が増えている。世界的な客船会社が、2010年を境に日本発着コースを続々と開始したことにより、クルーズ人口が拡大しているのだ。

 国土交通省によると、12年の日本のクルーズ船利用者は約21万7000人と、前年比16%の増加。13年も続伸し、特に、5〜7泊といった短めの日程の増加が目立っている。

 ただ、近年、利用者の拡大を牽引してきた外国客船会社は、中国市場を主眼として東アジアのクルーズを実施してきた。しかし、13年に、大手客船会社のプリンセス・クルーズが、外国客船としては過去最大規模で日本発着市場に参入し、成功を収めた。これにより、日本でも本格的なクルーズ新時代が始まったと言っても過言ではない。

時間的、体力的に楽で
料金もリーズナブル

 今までクルーズの旅と言えばリタイア後、豪華客船で世界一周するといったイメージが強く、高額で、長期間にわたる旅という誤解があった。

 確かに、ラグジュアリークラス(右の図を参照)の超豪華客船であれば、1日当たり1人5万円台の料金が掛かるものもある。しかし、クルーズ代金には、移動・宿泊だけでなく、船上での食事やエンタテインメントなどの料金も含まれている。カジュアルクラスであれば、1万円前後と格安なものもある。

 同じ客船であれば、料金の幅は部屋の広さ、景観、設備(フルバスタブ仕様)などの違いのみ。食事などの基本的サービスに料金による差はない。陸路、空路を使い、観光地を巡る旅であれば、交通費、宿泊費、食費などが加算され、クルーズ料金を超えるに違いない。

 数多くの観光地を巡るためには、荷造りし、重い荷物を運んで移動することになる。“動くホテル”と称されるクルーズは就寝中に移動し、目覚めれば目的地に到着。時間的にも体力的にも、楽に旅を楽しめる。

 日本発着コースの充実によって、誰もが気軽に参加できる旅の選択肢の一つとして、クルーズの旅が今後、急激に普及・拡大する可能性が大きい。