1月29日(日本時間30日)、米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小の続行が決定された。“想定通り”の結果であり、市場はこれを織り込み済みだったはずだ。

 ところが、同日の世界の株式市場はほぼ全面安となった。日経平均は一時500円以上の下落で1万5000円割れに見舞われた。為替も1ドル102円台まで円高に振れた。

 1月24日以降、市場の動揺が続いている。発端は、アルゼンチンの通貨ペソの暴落だ。通貨下落が続く中、外貨準備の不足から、政府高官が介入を断念すると発
言。2001年にデフォルト(債務不履行)を起こしている同国の信認への不安が高まった。これがトルコや南アフリカなどにも飛び火し、これらの通貨も暴落した。

 昨年半ばから、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカ、トルコは、特に通貨に脆弱性を抱えるとして「フラジャイル(脆弱)5」、あるいは各国の頭文字を取って「BIIST」(ビースト)と呼ばれ、市場関係者から不安視されていた。それに火がついた格好だ。

震源地は新興国ではなく米国 <br />収まらない市場不安の“深層”為替市場の動揺はしばらくおさまりそうにない

 さらに、1月23日に発表された中国の12月のHSBC製造業購買担当者指数(PMI)が、景況の悪化・改善の節目とされる50を割り込み、同国の景気減速への懸念も重なった。折しも、16日にはかねて乱発を問題視されていた「理財商品」(高利回りの資産運用商品の一種)の一つが、1月末にデフォルトになる可能性が高いと伝えられており、これも不安を煽った。

 27日、問題の理財商品は元本を返済することで合意したと報じられ、28日にはトルコ、29日には南アフリカが緊急利上げを行ったものの、市場の不安はいまだ収まっていない。

 ただ、“アルゼンチン・ショック”や中国の景気減速が市場の変調をもたらしたことには、違和感を示す向きが少なくない。アルゼンチンが大きな問題を抱えているのは事実だが、「もともとそういう国であり、01年のデフォルトによって国際金融市場からは締め出されて孤立している」(村田雅志・ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト)。つまりは本来、同国個別の“閉じた”問題である。