ビッグスリー救済論議が紛糾していた11月下旬に米ロサンゼルスで開かれたモーターショーで、日産自動車・ルノー連合を率いるカルロス・ゴーン社長が、筆者ら少数のジャーナリストとのグループインタビューと筆者との個別インタビューに応じた。懸案のビッグスリー問題から金融危機の影響、アライアンスの行方まで、その場で話された同氏の率直な考えをお伝えする。(原文・聞き手/ジャーナリスト ポール・アイゼンスタイン Paul Eisenstein)

カルロス・ゴーン
撮影:住友一俊

―自動車メーカーが政府から資金援助を受けることの是非をどう思うか。

 今、もしも我々が自動車業界全体をラディカルな方向、すなわち可能な限りクリーンな方向に真剣に転換したいとするならば、巨額の投資が必要だ。たとえば、性能の良い電気自動車を開発することは、根底からの(転換を必要とする)プロセスである。ところが、現在、自動車メーカーは資金へのアクセスという面で非常に困難な事態に直面している。たとえ短期に資金を得られたとしても、そのコストは非常に高い。

 これは何もビッグスリーだけの問題ではない。皆が低コストのファイナンスを見つけられないのだ。我々は皆同じ状態にある。

―それは、(ビッグスリーに対するような)政府保証付きの低利融資枠の拡大が他社にも必要という意味か。

 米国は、他国にとって、ベンチマーク(比較評価基準)的な存在だ。ゆえに、(米国で政府支援が正式に決まれば)、同じようなことは別の場所でも起こりうるだろう。繰り返すが、それは、ビッグスリーうんぬんの問題ではない。低コストファイナスは業界全体の環境対応のために必要だ。

―ビッグスリー破綻の可能性をどう見ているか。

 私は、今は業界全体が非常に注意深くならなければいけない時期だと思っている。どのメーカーもそれぞれ固有のリスク事情を抱えており、この先の見通しは厳しい。こうした状況下で、いずれかのメーカーが破綻する可能性は非常に高い。そして、もしも一社でも破綻したら、業界全体を、タービュラントな(大荒れの)状況に陥れるだろう。そのようなことは、起きて欲しくない。競争相手にすら起きて欲しくない。