年率3割のスピードで価格下落が進む液晶テレビ市場において、ある異変が起きている。

 いまや北米市場で大量の家電製品を売りさばく量販店の1つ、ウォルマート・ストアーズで、主力の船井電機の液晶テレビだけが実質的に値上げされているのだ。

 船井電機の液晶テレビは“エマーソン”というブランドで販売されている。売れ筋の32インチサイズの店頭価格は、現在540~550ドル。「ここ数年の価格下落のスピードを考えると、本来500ドルを切っていてもおかしくない」(関係者)が、それより1割程度高めに価格が維持されている。

 この異例の“値上げ”について関係者は、「液晶パネルの高騰を受けて、船井電機はウォルマートとの商談で、原価増を納入価格に転嫁してくれるよう交渉した結果だろう」と明かす。納入価格の上昇が、そのまま店頭価格に直結しているのだ。

 たとえ仕入れ価格が上がろうとも、ウォルマートには、どうしても船井電機の液晶テレビが欲しい理由があった。

 まず、パネルメーカーによる生産調整により、32インチサイズの液晶テレビの需給が逼迫しているからだ。

 次に、船井電機製品は返品率が低いからだ。米量販店では、顧客がテレビを2台持ち帰り、実際に使ってみて、気に入ったほうだけ購入するという商習慣があり、返品率は高くなりがちなのだが、不良品が少ない船井電機製品はめったに返品されない。