どんな時代もたくましく生き抜いていける大人に育ってほしい。
わが子にそう願う親御さんは多いはず。
今回は、開成学園校長・柳沢幸雄先生に、一生自分で稼ぎ続ける力をわが子につけさせるための秘訣をうかがいます。

子どもの夢を叶えるために、親がすべきこと

――子どもの将来に対して、不安を抱えている親は多いと思います。できれば、将来的に安定してお金が稼げるようになってほしい。そのためには、どんな風に育てればいいのでしょうか?

柳沢 今の時代、多くの親御さんが気にかけていらっしゃる問題だと思います。生きていくために最も必要なのは、“自分で稼ぐ力”を身につけることです。最悪のシナリオは、40歳になった子どもがパラサイトで、70代の親の年金頼みで暮らすこと。そうなると、いずれは共倒れになってしまいます。

子どもの幸せを考えるなら、やりたい仕事でお金を稼げるようになるのが一番いい。好きな事なら誰しも一生懸命になれますから、頑張ることが苦でなくなるし、人生の充実感も違ってきます。親として、子どもの夢を100%叶えることはできなくても、やりたい仕事に就けるようにサポートしてあげることはできます。

――どのようにサポートすればいいのでしょうか?

柳沢 もちろんストレートに好きなことが仕事に直結すればいいのですが、なかなかそうはいきません。けれども、好きなことに関連した仕事であれば、自分を満足させることができる。

 たとえばサッカー好きの子がいたとしましょう。プロの選手になるという夢は叶えられなくても、サッカーに関わる職業は他にもたくさんあります。トレーナーやドクターなど医療面から選手をサポートする方法もあるし、クラブの運営や事務方としてサッカービジネスに携わったり、スポーツ報道に進むという道もある。サッカーを仕事にするための入口はひとつではありません。子どもに対して、そういった方向性を示してあげたり、情報を与えて“好きなこと”と“仕事”を結びつけてあげることはできるはずです。

柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千 葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。