前回は消費税増税がもたらす二つの影響、駆け込み需要とその反動減、および物価上昇に伴う実質所得の減少がどの程度の規模で生じるのかについて予測を試みた。今回は、消費税増税後の日本経済を考えるうえで重要な残る二つの要素である政府の経済政策、日銀の金融政策について検証し、全体のまとめとして消費税増税後の二つのシナリオを提示する。

5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) <br />政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む<br />――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士かたおか・ごうし
1972年愛知県生まれ。1996年三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。2001年慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程(計量経済学専攻)修了。現在三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。早稲田大学経済学研究科非常勤講師(2012年度~)。専門は応用計量経済学、マクロ経済学、経済政策論。著作に『日本の「失われた20年」』(藤原書店、2010年2月、第4回河上肇賞本賞受賞、第2回政策分析ネットワークシンクタンク賞受賞)、『アベノミクスのゆくえ』(光文社新書、2013年4月)等。

視点3
政府の経済政策の効果

 3つ目の視点は、政府の経済政策についてである。既に述べたように、政府は消費税増税による景気の腰折れを抑制するため経済対策(「好循環実現のための経済対策」)を行う予定である。

 1997年4月の増税時には消費税増税の悪影響を踏まえた経済対策はあらかじめ用意されておらず、むしろ1996年11月に成立した第2次橋本内閣において1997年1月に財政構造改革会議が発足し、同3月18日に「改革5原則」が提示された。

 これは、①財政赤字対GDP比3%、赤字国債発行ゼロを2005年までのできるだけ早期に実現する、②20世紀中の3年間を集中改革期間として主要経費につき具体的な量的縮減目標を定める、③1998年度予算においては、政策的経費である一般歳出を対1997年度比マイナスとする、④公共投資基本計画などのあらゆる長期計画について、大幅な縮減を行う、⑤国民負担率が50%を超えない財政運営を行う、というものであった。

 そして1997年11月28日に「財政構造改革法」が成立する。1997年4月以降、景気動向は悪化の気配を見せていたが、政府が補正予算を伴う経済対策を講じたのは1998年6月のことである。以上の点を考慮に入れると、今回の政府の対応は迅速とも言える。